化物語の前の話、「傷物語」
主人公阿良々木暦が、春休みに金髪の美しい吸血鬼に行き逢う。
吸血鬼は、「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」と名乗った。
吸血鬼ハンターに手足をもがれ、瀕死の重体を追っていた彼女。
それを阿良々木暦は助けるのであった。
平凡な高校生の日常は激変した。
のちに彼は、「まるで地獄の春休み。そして高校生活最後の春休みは、誰も幸せにならない、なんの救いもない、見るも無残なバッドエンドで、幕を引いたのだった」と語ることになる。
今回読んだ「傷物語」はそんなお話。
化物語が大好きで、アニメは全て見ていますが、「傷物語」はまだアニメ化されていません。
アニプレックスが2012年に映画化するといって、もう3年が経ちますが、未だ音沙なし。
もう待てない!というわけで原作を買って読みました。
最近ライトノベル読んで現実逃避したかったところだし、ちょうどいい。
化物語の原作は読んでいたので、西尾維新を読むのはこれが二冊目。
時系列的には化物語の前の話で、阿良々木君が吸血鬼になったのと「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」と出会った経緯が描かれている。
なので、化物語から読むのではなく、傷物語から読んでも全然違和感がないと思います。
今回も阿良々木君の軽快なツッコミと、巧みな言葉遊は健在で、ほとんどキャラクターのセリフで物語が展開していきます。
多分活字嫌いな人でも、スラスラと読めるのではないかと思います。
特に本作のヒロインである「羽川翼」のスカートが、一陣の風でめくれた際の描写はさすがだと思った。
だってただスカートがめくれただけなのに、4ページにわたって細部まで表現しているんだから。
なんすかこの表現力。
創造力のレベルが半端ないです。
阿良々木くんにばっちりスカートを見られた挙句、その感想を4ページにわたって細部まで描写された、羽川翼の返しもまたうまい。
見られたくないものを隠すにしては、スカートって、どう考えてもセキリュティ低いよね。やっぱり、スパッツっていうファイアーウォールが必要なのかな?
比喩が巧みで見事。さすが西尾維新である。いや、さすが羽川翼、というべきか。
電車の中でくすくす笑いながら読んでしまいました。
このように、誰かがボケて阿良々木くんツッコんだり、また、阿良々木くんがボケて誰かがツッコんだりという、ギャグ要素の強い展開が多いです。
ストーリー自体は結構シリアスなんだけどね。
そのギャップがいいのかもしれない。シリアスだからといって、序盤から終盤までシリアスな展開だったら、読み疲れてしまいそう。箸休め的な意味合いも含めて、笑いを随所に盛り込むのはひとつの手でしょう。
とにかくサクッと読めた一冊でした。
ストーリーも僕個人的はかなり好きな部類でしたし、
平凡な高校生が、突然吸血鬼に出会って、しかも自分が吸血鬼になっちゃった挙句、自分が人間に戻るべく、3人の吸血鬼ハンターたちと対峙することになったり、吸血鬼キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードが抱える、過去の傷の話もなかなか心に響くものがあった。
僕みたいに現実逃避したいと思ってるなら、ぜひ一読をおすすめします(笑)