要件を言おうか

カネとかジンセイとかいろいろ

ただグラコロを買いに来ただけなのに

※本記事には広告が含まれています。
スポンサーリンク


筆者はマクドナルドを追われた身である。

 


こんな噂を聞いた。何やらマクドナルドでは筆者の手配書なるものが出回っていると。

それによれば、筆者がマクドナルドの店舗に入店した瞬間、監視カメラの顔認証システムが作動し、システムが「しんま」と認識した瞬間、各所に配置されているドナルドたちに通知がいくシステムらしい。
通知を受けたドナルドたちは、斧、機関銃、ダガーナイフ、日本刀、各々好きな武器を携帯し、即座に現場に駆けつける。

なぜか。
マクドナルドが悪と判断したしんまを粛清するためだ。

店舗には、依然しんま派の残党も残ってはいたが、しんま粛清の懸賞金が釣り上がるに連れてしんま派はドナルド派にあっさり鞍替えしたらしい。クソが。

ある筋の情報によれば、17歳の女子高生A子は、わざわざしんまが潜伏してる地区の店舗に移籍してきて、しんま粛清のチャンスを今かと狙っているという。
A子はいわゆる苦学生であり、実家は絵に描いたような貧乏で、トタンでできたボロ屋で暮らしている。
家にはクーラーという文明の利器など当然なく、夏場は暑くて家で勉強ができやしない。

だからA子は、夏場はもっぱらマクドナルドで100円のハンバーガーと水だけを注文し、勉強に勤しむのが常だった。

そんなある日、A子がいつものようにマックで勉強をしていると、たまたま店舗に訪れていたドナルドが気さくにA子に話しかけてくれ、そしてA子に勉強を教えてくれたという。

ドナルドはいう。「また勉強教えてほしくなったらいつでも来なさい」

100円で何時間も店に居座る子供に、かような優しい言葉をかけてくれるドナルドにA子は心底心酔した。

A子にしてみれば、しんま粛清は、高額の懸賞金で貧乏を脱し、なおかつ大好きなドナルドに恩を返すことができる一石二鳥のチャンスなのだ。

「しんまは私が仕留める」

そう決意したA子の足首のナイフホルダーには、刃渡20cmのナイフが忍ばせてある。

こうした敬虔なドナルド信者が全国に何百といるらしい。

無論、マクドナルドに行かなければこうした包囲網に引っかかることはない。
だかそれは無理な相談だ。グラコロが販売されたからだ。

断然モス派の筆者だが、グラコロ販売時には宗教をモスからマクドナルドに変える。グラコロは、グラコロはそれだけ美味しいのだ。ふわふわなバンズ、至高のソース、サクサクのコロッケ、一口噛み締める度に味覚が感動の雄叫びを上げる。
水道水60%トップバリュ製品40%で構成されている筆者の身体は、このような贅沢な一品を食すと、体内からセロトニンが溢れ出ててくる。
仮に筆者がうつ病になっても、口の中にグラコロを突っ込めば即完治するだろう。

グラコロには命をかけるだけの価値がある。

帽子を深く被り、マスクをし、サングラスをかけ、逃亡者定番のスタイルに身を包み、決死の思いでグラコロを買いに行った。もう一度あの味を確かめたい。マクドナルドが産んだ最高の逸品をこの舌で楽しみたい。

店はとても混んでいて、誰も筆者に気がつかない。カメラに顔が撮られないように、注意しながら注文をする。
以前一緒に働いていた社員がいたが、ポテトに夢中で筆者に気がつかない。
問題なく注文を終え、商品を受け取り、店舗を後にする。
「よし!買えたぞ!」

そう安堵したのも束の間である。
店の前にA子が立っていた。

「しんまさん。きっとあなたならグラコロを買いに来ると思ってましたよ」

読まれていた。
A子はおもむろに刃渡り20cmのナイフを取り出し、筆者に向かって走り出した。
A子は距離を詰めるとナイフを振り上げ、「裏切り者には安らかな死を!」と叫ぶ。
だがその刹那、A子の動きが止まる。A子は苦悶の表情を浮かべながら目に手をやる。その目からは涙が溢れていた。
「ぐ、しんまさん一体何を・・・!」

そう、筆者は隠し持っていた塩をA子にぶちまけたのだ。塩が目に入ったA子はたまったものではない。たまらずその場にしゃがんでしまう。

「A子さんはまだクルー歴が浅いから知らないかもですが、ポテトを注文する時に、『塩は別で』と言えば、塩は別でもらえるんですよ。その塩をお見舞いしました」

そう。筆者はグラコロとは別にポテトも注文していた。万が一に備えて、塩を別でもらっておいたのだ。それが功を奏した。

「しんまああああぁぁ!」
うずくまりながら怒声を発するA子を後に、筆者は全力で駆け出し逃走する。
これがマクドナルド歴の違いである。伊達に13年働いていない。

あと5分。あと5分で家に着く。そうしたらグラコロを食べられる!
走るスピードは上がる。

「ランランルー♪」

絶望のメロディを聴覚が捉えた。
まさか!
辺りを見渡すと、機関銃を手にしたドナルドが歩道の手すりに腰掛けていた。

「しんま君。爪が甘いねえ。甘い甘い。実に甘いよ。A子ちゃんを追い払って油断したね」

ドナルドは立ち上がり、不気味な笑みを浮かべながら続ける。

「グラコロが大好きな君が買いにこないはずがない。そして買いに来るならあえて昔働いていた店舗に来る。我々の裏をかいてね。僕はさらにその裏をかいて、君が働いていた店舗により監視の目を光らせておいたよ。あえてグラコロを買わせて油断を誘ってね」

女子高生程度ならいくらでもあしらえるが、ドナルドは無理だ。
殺戮ピエロは躊躇することなく機関銃を連射する。なすすべもなく筆者の身体は蜂の巣になり、グラコロは宙を舞う。

ドナルドは言う。
「今夜はパーティーだ。ランランルー♪」

ドナルドは筆者が食べるはずだったグラコロをかじりながら、ステップで闇に消えていく。
絶望のメロディが死のカウントダウンのように聞こえ、徐々に意識が遠のいていく。

「俺はただ、グラコロを買いに来ただけなのに・・・」




※本記事は筆者の妄執が多分に影響しており、実際マクドナルドで監視カメラに顔認識システムが導入されている事実はなく、またドナルドがこのような凶暴性を持ち誰かを狙うことはありません。本記事にはマクドナルドを咎める意図はまるでなく、グラコロのを美味しさを普及したく筆を取った次第です。実際、今回も美味しかったです!なので、訴訟は勘弁してください(全力土下座)。イカれたグラコロアラサージャンキーの戯言だと思って温かい目で見ていただけると幸いです。