レンタルスペース、てめーはもうだめだ。
突っこんだ100万円を回収できる見込みがない。
次なる収益機会を求めて再びFXをやることにした。
目次
イギリスのEU離脱で全ての資産を吹っ飛ばす
筆者がFXに手を出したのが2015年頃だったと思われる。
確か原資30万円くらい。日々トレードを続け、日々負け続け、その度に入金して阿鼻叫喚な1年ちょっとを繰り返す。
そして来るべき運命の日。2016年6月24日である。
イギリスがEU離脱するかの是非を問う国民投票があった日だ。
ひたすら負け続けてた筆者は、「ここで1発取り返してやる！」と1番ダメな思考に至り、あろうことか決死のポンド買いという愚行を犯し、見るも無惨爆死した。イギリスのEU離脱が決定したからだ。
ポンド円は1日で27円という歴史的大暴落を記録し、ロンガーは全て焼き尽くされた。
筆者は、茫然自失、意気消沈、心ここに在らずの状態に陥り、精神の安定を図るため部屋の掃除を10時間以上していた思い出。
翌日、無性に頭にきたのでかろうじて口座に残っていた2000円全額を宝くじに突っこんだら、それも全て外れた。1円も当たらなかった。
宝くじの還元率は46％ちょいなのだから、多少は戻ってきてもいいはずなのにリターンは0。圧倒的0。鬼か。
あまりの無慈悲さに怒り狂った筆者は部屋中をのたうちまわり、モノをそこらじゅうに投げ散らかし、「ジーザス！！！」と愚かな雄叫びをあげていた記憶。
地球外知的生命体がもしいたとして、奴らがそんな筆者の姿を見たとしたら、きっと以下のような会話がなされてたに違いない。
「いいかい我が息子よ。これが地球人の知的レベルというものだ。なぜ人間同士が争いを続けるのかというと、あそこで醜い雄叫びをあげている個体のように、人間はとことん愚かなのだ。我々はこうはなってはいけないよ」「うん、わかったよパパ！」
ジーザス。
ともかく、これが決定打となり筆者はFX引退に至ったわけである。
そこから現在に至るまでFXにはほとんど手をつけてない。
金融市場をハックした天才たちから得たヒント
そんな筆者がなぜまたFXをやろうとしてるのか。それは金融市場をハックした天才たちから、市場で収益機会を得るヒントを得たからだ。そのうちの2人を紹介する。
300万円を30億円にした1人ヘッジファンド
2000年代、山本氏（仮名）は株式市場や商品市場の自動売買プログラムを作った。
この自動売買プログラムは、金融市場の取引データを解析しアノマリー（市場の癖）を発見し、勝率が50％を超えるところに金を賭け続けるという内容だった。
勝率が51％の場合得られる利益はとても小さい。
しかし、取引を全てコンピューターが行いそれを何千回と繰り返せば、ローリスクで資産は積み上がっていく。
こうして山本氏は20年間弱プログラムを動かし続け、元手の300万円は30億円に化けた。
そんな山本氏は同業者から、「最も成功した1人ヘッジファンド」と呼ばれたそうだ。
山本氏は2019年不慮の事故でこの世を去ったが、彼が死んだあともプログラムは動き続け週700万円の利益を生んでいた。
参考： 裏道を行け ディストピア世界をHACKする
最も賢い億万長者
山本氏は1人の頭で30億円の資産を築いたが、数学者のジム・シモンズは複数人の優秀な数学者たちとチームを組み、2019年時点で550億ドル（現在ドル円レート換算だと約7兆円）を運用する巨大ファンドを作り上げた。
シモンズも山本氏と同様、50％以上勝てるポイントに金を賭けるプログラムを作り上げ巨額の収益機会を得たのである。
一例を上げると、ドイツマルクには大きなチャンスがあったそうだ。
ある日にマルクが上がると翌日も上がり続ける確率が異様に高い。
同じように、マルクが下がると翌日も下がる確率も高かった。1日、1週間、1ヶ月、と時間軸を変えて観察してみても同様の傾向が確認できた。
同じ値動きが2回に1回以上続くことをチームは発見し、なぜそのような値動きになるのか諸説あったが判然としない。
しかし彼らには理由などどうだってよかった。取引がうまくいきさえすればいいのだから。
（これは1980年代の話です。現在ドイツマルクはユーロ導入により廃止）
このように、シモンズのチームは普通の投資家が見逃してしまうような小さな市場の歪みを見つけ出し、そこに金をベットし続けたわけである。
シモンズがヘッジファンドを立ち上げたのが1978年だが、当時このようなアプローチで市場と向き合う人はほぼ誰もいなかった。
投資家のほとんどは経済知識、金融知識、そして投資家としての経験値を活用し市場動向を分析しようとした。
しかし、シモンズは数学的アプローチで市場の歪みを見つけることに腐心し大成功したのである。
この偉業からシモンズは「最も賢い億万長者」と評された。
参考： 最も賢い億万長者 数学者シモンズはいかにしてマーケットを解読したか 上下巻
エッジがある時だけ取引をする
山本氏もシモンズも共通していたのは、エッジがある時だけ取引をするというものだ。
ここでいうエッジとは、「強み」や「優位性がある」という意味で使われる。
市場の動きのほとんどがランダムウォークで形成されていると言われている。
ランダムウォーク下では相場の行先を誰も予想できない。
目隠しした猿にダーツを新聞の相場欄に投げさせて、命中した銘柄でポートフォリオを組んでも、プロの投資家とさして運用成績は変わらないという皮肉な話もある。
参考： ランダム・ウオーク理論-猿のダーツ投げ Wikipedia
だが、特定の時間、特定の状況、特定の実需などが発生すると規則的な動きをすることがある。
ランダムウォーク下で金をベットするのはギャンブルになるが、そうじゃない時（エッジがある時）にベットするなら勝てる確率は上がる。
山本氏とシモンズはこのように、「エッジがある時だけ取引をする」を徹底し巨万の富を築き上げた。ここにヒントがある。
結局のところ確実に勝てる方法はない
山本氏やシモンズの事例は再びFXを再開しようと思った大きなきっかけの一つではあるが、彼らの戦略は非常に参考なる一方、凡人である筆者が全く同じことをできるかといえば、答えはNOになる。
億万長者の本を読んで誰もが億万長者になれるのなら、この世に貧困という二文字はきっとない。
なので、筆者は彼らと全く同じ手法を取ることもないし、システムトレードに手をつけるつもりもない。第一筆者にプログラムは書けない。
したがって、彼らの、「エッジがある時だけ取引をする」という基本戦略を参考にしつつ、筆者独自の立ち回り方を考えねばならない。
答えのない答えを求めて、多くの書籍や記事、多くのトレーダーや為替ディーラーたちを見てきた結果、筆者が出した結論は拍子抜けするほど当たり前かつシンプルである。それが以下。
・手法はなんだっていい(自分に合ったものを)
・勝ち方より負け方が重要
勝者の手法には驚くほど共通点がなく皆やり方はバラバラだった。
彼らが口を揃えて言うのは、「自分にあった手法を」ということである。
気が長い人はスイング的な手法が合ってるだろうし、せっかちな人はスキャルといった超短期取引が適してる。
自分に合ったものを採用するのが1番合理的なのだ。
なぜなら、確実に勝てる手法などこの世には存在しないのだから。
相場は生き物のように絶えず変化しているので、恒久的に通用する手法などあるわけもなく、状況に応じてアップデートしていかなければたちまち市場の闇に飲み込まれてしまうのがオチで、「確実に勝てる手法」を求めても、それは商材屋の預金残高を増やすだけの結果しか生まない。
様々な識者たちの知見、そして相場を俯瞰して見た時、筆者は「相場は負けと向き合うゲーム」だと結論づけるに至った。
勝者の手法に共通点はないが、敗者の手法には大きな共通点がある。
敗者の共通点、それは損切りができないことだ。
どんな優秀なトレーダーでも必ず負ける時はある。その時に損切りできなかったら、その一回の負けで損失は莫大な額に膨れ上がる。
損切りできないということは、自分の負けを認められないのと同義である。
ボクシングで例えるなら、顔面をボコボコに殴られ出血し、とうとうダウンし、10カウントを取られ敗北を喫したのに、「いや俺はまだ負けてない！」と顔面血だらけになりながら吠えているようなものである。愚かである。浅はかである。
だが、人間は利益を出した時の喜びより損失が膨れ上がる時の悲しみの方が大きいため、中々負けを認められない。（いわゆるプロスペクト理論）これはもう本能である。
敗者はこの本能に抗えなかった人たちであり、勝者はこの本能に打ち勝った人たちだ。
相場で収益を上げたければ、勝ち方よりも負け方を学ぶべきなのである。
ここまで読んで、「何を当たり前のことを・・・そんな話耳にタコができるほど聞いてきたわ」と思うかもしれないが、確実に勝てる方法がこの世にない以上、結局こういう結論にならざるを得ない。
少なくとも筆者はこれ以上の答えを見出せなかった。
他にも細かい話はあるし、筆者なりにデータを分析して、「エッジがあるポイント」を発見することもできたが、より具体的な話は本記事の趣旨からは外れるので割愛。
ともかく結論としては、
・エッジがある時に取引する
・自分に合った手法を使う
・負けと向き合う
の3つが筆者がFXをやる上での大まかな方針になる。
なので実はもう取引自体は始めている。（最小ロットで）
といってもそれは収益を出すためではなく、「ちゃんと自分が損切りできるか」の練習するためであり、損益は度外視している。
これでもし損切りができないようなら、どれだけロジックを積み重ねたところでまた6年前と同じ結果になるだけなので、努めて謙虚に取引をし、ちゃんとうまく負けることを目指し、十分な結果が出たら本格的にFXを再開することとする。
おわりに
FXをやる人は皆自分は勝てると思って市場に参加するが、9割は1年も持たずに退場になると言われている。
人生何一つうまくいっていない筆者が、よりによってそんな厳しい世界に身を投じるなど、客観的に考えて無謀にしか思えないが、「自分の理論を試してみたい」という欲求に抗えなかった。
数年後、皆の予想通り当然にFXで破産し、闇金に追われながらマグロ漁船に乗って命懸けの漁業に勤しんでる筆者を見かけたら、「しんまの人生に幸あれ。くれぐれもお前が海の幸にならないようにな」と心の中で祈ってくださると、幾分かは救われます。
海で待ってます。
