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「山投資」 誰もが知らない山の儲け方

※本記事には広告が含まれています。
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山に投資をするという本を読んだ。

一生お金に困らない山投資の始め方

一生お金に困らない山投資の始め方

  • 作者:永野彰一
  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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通常の不動産投資であれば、どうやって儲けるかが何となく想像がつくものだが、投資対象がこと山になってくるとマネタイズのイメージが全く湧いてこない。

山を賃貸に出したところで、43年間洞窟で暮らした「洞窟おじさん」みたいな超人が借りてくれるわけもなかろう。

本書ではそんな山をマネタイズする方法を紹介している、おそらく日本で唯一の山投資本である。

目次

 

山をマネタイズする「電柱」と「送電塔」

 

結論から言えば、山をマネタイズする基本の方法はこの2つになる。

まず電柱。
山に電柱が立っていると、電力会社やNTTなどから「電柱敷地料」という名目で1本あたり200円が支払われるという。
ちなみに月200円ではなく年200円。

仮に所有している山に100本の電柱が立っていた場合、年間の電柱敷地料は2万円となる。

なお、電柱敷地料の金額を明確に出しているのは、筆者が調べた限り九州電力だけだった。やはり相場は1本200円くらいらしい。
参考: 九州電力送配電 電柱敷地料


もう一つが送電塔。
これも電柱同様、山に送電塔があった場合電力会社からの敷地料が支払われる。

著者の永野氏は保有している山に送電塔があり、この敷地料が年10万円だという。
一気に単価が跳ね上がるが、著者いわく送電塔付きの山が売りに出されることはまずないので、送電塔目当てで山探しをするのは現実的じゃないという。

実際、永野氏も送電塔付きの山は一つだけしか持っていないらしい。

この2つが山で稼ぐ方法なのだが、送電塔付きの山はほぼ市場に出回らないことを考えると、「電柱敷地料」が山投資のメイン収益となる。

 

チリも積もれば山となる


一体山はいくらで買えるのだろうか?

永野氏によれば、ほとんどの山を1円、もしくはただで譲ってもらっているので、取得費用はほとんどかかってないという。

しかも固定資産税がかからない、もしくは超絶低額の山を手に入れているので、電柱1本200円の低収益でも十分黒字となるし、電柱の数をどんどん増やしていけばバカにならない金額になる。

まさに、チリも積もれば山となる、である。

永野氏いわく、山を所有している人のほとんどが、相続で山を譲り受けた高齢者ばかりで、山を保有することによって発生するリスク(これは後述する)などを鑑みて、タダでもいいから手放したいと考える人が多いという。
なので、ほぼお金をかけずに山をゲットできる。

ただ、そうは言ってもそれを実現するのは簡単ではない。

永野氏は業者片っ端から電話をかけ、「この山1円になりませんか?」「電柱がある山を探しています」と営業しまくる。
無論、ほとんど無下にされるが、時たま話を聞いてくれる業者に巡り合う。

こうした地道な努力と根気が結実し、低額で山を次々とゲットできるのだ。

実際、山林売買を仲介しているサイトを見ても、1円で売っている山など何一つない。
(とはいえ、面積が小さかったり、条件が悪い山は30万円以下でも普通に売られている模様)
【参考】
山林売買物件 | 山いちば 山林物件の購入売却情報サイト
山林売買.net
山林バンク 山林売買に詳しい専門家がお届けする山林情報総合サイト


山投資をやるなら、相当なる根気を覚悟しておくべきだろう。

 

山投資の知られざるリスク

 

都合の良いことばかりを強調してリスクに触れないのは、「ビットコイン儲かるよ!口座開設して乗るしかない、このビッグウェーブに!」と謳う悪質なプロブロガーと何ら変わりない。
お前が羽振りいいのは仮想通貨への投資ではなく、仮想通貨アフィリエイトのおかげだろと。

金に目が眩んだプロブロガーの古傷をエグる余談はともかく、山投資におけるリスクにも触れておきたい。

通常の不動産取引は宅建業法の縛りを受けるので、売買契約書と重要事項説明書を仲介業者が作成する。

一方、山林は宅建業法の縛りを受けないため、売買契約書のみで取引が完結する。
こうなると、取引成立後、その山に何らかの問題があったとしても、買主は保護される立場にない。

したがって、購入前にその山に問題がないかはちゃんと自分で調べないと、思わぬトラブルを引き起こす。
特に、購入しようとしている山に、変な規制がないかはちゃんと調べるべきだろう。

もう一つが天災リスク。
例えば、山に大木があって近くに民家がある場合、もしその大木が倒れ民家に直撃した時、責任問題は免れない。
民家の住人に損害賠償請求を起こされたら、しっかり責任を取らねばならないだろう。

 

山投資は非効率的ビジネス

 

永野氏は「山王」と名乗ってはいるが、山で大金を稼いでいるわけではない。

実際、本書でも山投資の一番の成功例が、送電塔付きの山をゲットして年収10万円を達成した事例でくらいで、その他紹介されている事例は大したことはない。

永野氏が山を何個所有して、何本電柱があって、どれだけの電柱敷地料を得ているのかもつまびらかにされていない。

せめて、所有している山1つあたり、平均何本の電柱があるのかくらい書いててくれれば、山投資へのイメージがつかみやすいのだが、残念ながらそうした詳細なデータは載っていない。

2016年の調査では、日本にある電柱の数は約3500万本。
参考: 日本の電柱の数 | NPO法人 電線のない街づくり支援ネットワーク

この3500万本のうち、何本が山林に設置されているのかは不明。

永野氏は不動産会社に、「その山電柱立っていますか?」と聞きまくっていたそうだが、果たして不動産会社は電柱の有無はわかっても、何本あるかまでわかるものなのだろうか。

以上のことを踏まえ、投下せねばならない労力と得られる利益を考慮すると、山投資で儲けるのは非効率的という結論に達する。

少なくとも、本書の、「一生お金に困らない山投資の始め方」というタイトルはやや過言である。

「プロブロガー」ならぬ、「プロヤマー」になろうと思ったが、どうにもそれは難しそうだ。う〜む、人生は世知辛い。

まあでも今回は、「電柱敷地料」をメインに紹介したが、電柱に限定せず他の可能性を探ってみれば、山投資は案外可能性に満ちているかもしれない。
例えば、

・山にキャンプ場を作る
・山でタケノコ刈りをしてそれをメルカリで売る
・林業に本格参入する


などでマネタイズを模索するのもあり。
アイディア次第で可能性は無限大。

リスク要因さえ排除できるなら山投資はさしてお金がかからないので、興味ある方はどうぞ。

 

なぜこのような山投資本が発売されたのか?

 

金儲けは性悪説に立て、というのが日本マクドナルドを作った藤田田の金銭哲学だ。

なぜかといえば、こちらが儲けたいと思っている場合、相手も同じように儲けたいと思っている。そうなると利害対立が起こる。
だから性悪説に立たないとあっという間に、有金を毟り取られてしまう。

藤田田にならい、性悪説で山投資を考えた時、なぜこのような山投資本が発売されたのか、という問いが生じる。

山投資が儲かるならそんな情報、普通他人には言わない。
言わなければ誰もが「電柱敷地料」など知らないのだから、山が生み出す利益を独り占めできる。

にもかかわらず、山のマネタイズ方法を我々庶民にご教示してくださるということは、何か裏があるのでは?と勘ぐってしまう。

考えられる可能性としては、

・山投資ムーブメントを起こすことで、全国に存在する不良債権化している山林を処分するため(つまり、山林売買の業者と一緒に考えたプロジェクト)
・高額セミナー、オンラインサロンなどへの誘導


などが挙げられる。

だが、業者と結託して山林売買ムーブメントを起こそうとしているとすれば、もう少し山投資儲かるアピールをするものだが、本書では特にそんなことはなく事実だけを淡々と書いている。

永野氏はオンラインサロンはやっているものの、本書でほとんどオンラインサロンに触れていないし、永野氏のSNS等にもオンラインサロンへの誘導は一切確認できない。もちろん高額セミナーも。

なので、性悪説で考えても、本書は健全な本なのだと思う。
ゲスな勘ぐりをしてすいませんした。
永野氏の行動力の凄さが際立った良書でした。

まあ、本書はともかくとして、不動産業は魑魅魍魎が跋扈する世界なので一定の猜疑心を持つのは正しい心構えだとは思う。

不動産は取引の一回性が強いビジネスのため、1人の顧客からより多くの金を搾り取るという商習慣が染み付いている。リピートが想定されていないから、そうした方が儲かるのだ。

筆者がやっている貸し会議室事業も、ガッツリ不動産が関係してくるので、業者の良いカモにならないように気を付けたい。

 

3月2日追記

 

著者からコメントいただきました。


山投資の情報を我々庶民に提供してくれた理由は、次の業種にシフトするのが最大要因とのこと。あと自分を追い込むこと。

筆者は性根が腐敗しきってることに加え、まるで儲かってないクソザコ商売人なので、嫉妬混じりの浅ましい勘ぐりをしてしまいました。
あらためまして、すいませんした!

【その他参考にした資料】
ブームの影でトラブルも、「山林売買」の落とし穴《楽待新聞》 - ニュース・コラム - Yahoo!ファイナンス
山林売買の価格相場や税金はいくらぐらい?山林売買の方法や利用時の注意点などを解説 - ベンチャーサポート不動産株式会社
若夫婦、山買ってキャンプ場を作る -YouTube